


その絵を見た瞬間、動けなくなった。
作者の名前はKudditji Kngwarreye。
オーストラリアの先住民族、アボリジニだ。
Utopiaというアボリジニコミュニティに生まれ育った彼は、
去年、亡くなったという。
享年、およそ、79〜89歳。
アボリジニは、誕生日を記録する習慣を持たない。

私の心の波をぴたりと止めてしまった。
そして、次の瞬間、洪水になった。
なにが描かれているのかもわからないのに、
どうしてか洪水になってしまった心を、
私はどうすることもできずに、
ただ立ち尽くしていた。

それは、アボリジニの中で、男性にだけ許された仕事。
食べるものを獲る、という
日常でありながら、同時に神聖であったその行為、
そして、彼の生まれ育った場所のすべてが描かれている。

歳を重ね、手が震え、
小さな点を描けなくなった。
そうしてやがて、自分の身の回りの世話さえできなくなった。
それでも、死の直前まで筆を握り続けたという彼に、
私は、会いたい、と思った。
彼の絵と一緒に過ごすこと。
それは、彼に会うことだと思う。
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Art direction, photo/ Fukamachi Remi(深町レミ)
Hair, make up/ Kon Natsuki(こんなつき)
Model/ 真通結衣
My country No.2
- Size: 40×40cm
- Material:
- Acryl on canvas
- ¥288,000- / 送料込み
Title : "My country"
Artist : Kudditji Kngwarreye
Born : 1928
Place : Utopia, Northern Territory, Australia
Kudditji Kwangwarreye
1938年、オーストラリアの中央砂漠、Utopiaに生まれる。言語はAnmatyerre。
2017年没。
彼は長年にわたり、鉱山労働者として働いていた。 また、アボリジニコミュニティ・Utopiaの大地と男性の儀式における管理人の役目を、重要な役割を果たしてきた。
1986年頃に絵を描き始めた当初、彼の直感的・ジェスチャー的な絵画はあまり受け容れられなかった。
血縁関係ではないが兄弟であったEmily Kame Kngwarreyeは、2008年に大阪国立国際美術館で行われた日本最大のアボリジニアート展「エミリー・ウングワレー展」のアーティストである。
彼女がオーストラリアと国際芸術の場面で活躍をする姿を見て、抽象的な絵画の研究を再開した。
結果として、生前は多くの国際展に参加した。
抽象的なイメージ、大胆な色の使用、直感的な形の相互作用などによって、今日、アボリジニアートのシーンで彼の名前は広く知られている。
若い頃は頻繁にエミューなどの狩りを行い、男性の伝統的な習慣を受け継いだ。
彼の作品"Emu Dreamings"、"My Country"は、生まれ育ったUtopiaでの経験に基づいている。
Kudditjiは、世界中のギャラリーやコレクション、家やオフィス、様々な場所に飾られた作品を通して、いまも呼吸を続ける。